基調講演U 「25%削減から100%削減へ
─ゼロカーボンエコノミーへの挑戦」
「25%削減から100%削減へ
ゼロ・カーボン・エコノミーへの挑戦」
地球市民機構フォーラムでの講演要約
温暖化問題に取り組んでいる東京大学の山本良一教授はこのほど、地球市民機構
フォーラムで「25%削減から100%削減へゼロ・カーボン・エコノミーへの
挑戦」のテーマで基調講演した。山本教授はこの中で「放出された二酸化炭素の
寿命は長く、気候システムの熱的慣性は大きい。気候を安定させるには、二酸化
炭素排出量を急速にゼロにする必要がある」と警告した。とりわけ山本教授は、
簡易本が安易な楽観論をばらまいていることを批判、科学的結論を社会的意思
決定の基礎にしなければならないと強調した。以下は、大阪経済法科大学
東京麻布台セミナーハウスで行われた講演の要約。
地球温暖化は回避可能
環境問題では激しい議論がある。イギリスの気象庁は「あと10年」という結論
を出した。
米航空宇宙局(NASA)のジェームス・ハンセン博士は、「ポイント・オブ・
ノーリターン」は過ぎたと言っている。人類にとって残された時間はない。
絶体絶命の状況にあるというのだ。
しかし、地球の温暖化は回避できる。それには全知全能を傾けた上での全力疾走が
必要で、低炭素革命とグリーン革命を成功させなければならない。まさに人類に
地球市民の自覚ができるかどうかに懸かっている。いわば禅における悟りと同じだ。
ホモサピエンスとして、生物種としての悟りを開かなければいけない時に来ている。
昨年(2008年)のリーマン・ショックにせんだってのドバイ・ショック、
早急な経済再生が望まれるところだが、それには環境ビジネスを喚起する必要が
ある。世界は今やグリーンリカバリー、グリーンニューディールの大合唱だが、
潜在的マーケットは巨大だ。
気候政策は安全保障にもかか関わってくる。その意味で環境問題への取り組みは、
安全保障政策であると同時に経済成長戦略でもある。
海面水位は一貫して上昇し続けている。これは海水の熱膨張および氷河の溶解が
主原因だ。世界的な温暖化の原因は、化石燃料の大量消費による炭酸ガス排出だ。
これが、過去50年で蓄積された人為起源の温室効果ガスとなった。
2007年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書が公表さ
れた。この英文1000nの報告書「気候変動の科学的基礎」の中に、「真犯人
は誰だ」という原因分析が83nにわたって書かれている。
これを読むと、人為起源の温室効果ガスというのが証明されている。
世の中に出回っている簡易本は、この83nを読んでいない。とりわけ科学者が
注目しているのは、温室効果ガスが地球を毛布のようにくるむと、成層圏は寒冷
化し、地表に近い対流圏は温暖化するという結論だ。
太陽黒点説で説明する向きもあるが、これでは成層圏も対流圏も一様に寒冷化
するか温暖化することになり説明し切れない。
科学ベースに意思決定を
科学は常に発展している。多数意見が真実であるとは言えないが、意思決定し
ないといけない時期に来ている。そのために科学的根拠を社会的意思決定の基
礎にしなければならない。
地球の表面温度は、最高温度を更新中だ。二酸化炭素が年間2ppm増加して
いる。1ppmの二酸化炭素の重量は80億dだ。これだけ大量放出されると、
海など自然界で吸収される許容度をはるかに超える。
人類は、1000年、2000年の地球的責任を負っている存在だ。そのため
には1000年、2000年後のことを考えた産業活動が必要となる。そういう
意味で、今は人類史的大転換を図らなければいけない時だ。
地球に残っている化石燃料である石炭や石油、天然ガス、オイルシェールを全部
燃やすと、二酸化炭素は炭素換算で40 0 0!d(1!dは10億d)になる
と試算されている。
これだけの二酸化炭素が空中に散布されると、30万年たっても二酸化炭素濃度
は産業革命の前には戻らない。化石燃料の消費を続ける限り、氷河期が来ること
はない。
このままでは地球が持つわけがない。大量の資源消費に歯止めを掛け、脱炭素
化と脱物質化を進めなければならない。
温暖化は、佐渡島にリンゴだけでなくミカンをも取れるようにした。こうした
温暖化現象の副次的なことを言う人もいる。しかし、総論からすると、悪影響
の方が良い効果をはるかに上回っている。!!!!!
試される人類の愛と理性素人でない
気候戦争のリスクも
気温の1度や2度、大したことがないと思うかもしれない。しかし、お風呂の
湯加減が、通常から1度2度上がると結構熱い。地球も同じだ。3度、4度上が
ればアウトだ。それは地球文明の崩壊を意味する致命的なものだ。
米国では上院では難しいが、下院では地球温暖化防止法案を通過させた。日本
はそれすらやってない。
日本ではサイエンスは金もう儲けの種かエンターテインメントと考えがちだ。一
方、サイエンスを生み出してきた欧州では、その結論を重くみて動きだす。日本
の腰は重く、サイエンスを見くびっている。
二酸化炭素排出問題は、中米のチキンレースの様相を示している。中国は先進国
としての責任を負う米国から先にやれと言い、米国は最大の二酸化炭素排出国で
ある中国からまず手を着けろという。
これでは、相互確証破壊(MAD)による核ミサイルの安全保障と同じだ。核の
相互確証破壊というのは、核ミサイルを撃ち込まれても、残った核ミサイルで
攻撃できるからという安全保障論理だ。今新しいMADが提案されている。
相互信頼脱炭素化(Mutual Assured Decarbonization)である。相手を信頼
して自ら率先して二酸化炭素削減に取り組む、人類の愛と理性が試されていると
も言える。
このまま放置し続ければ、グリーンランドの氷床は解け、アマゾンの熱帯雨林は
破壊される。結果として40年で2億人の環境難民が生み出される。
北極海の氷がこのまま進めば30年で消滅する。NASAは今年(09年)7月、
北極海の氷が2015年にも消滅する可能性があるというデータを公表した。
政治家は最悪の事態を想定して対応しないといけない。ティッピングポイントを
超えると、ドミノ現象の懸念もある。破壊が破壊を呼び込み、破滅の坂を転げ
落ちることになりかねない。
いずれにしろ空中に排出された二酸化炭素の寿命は長く、気候システムの熱的
慣性が大きいため、気候安定化には二酸化炭素排出量を急速にゼロにする必要が
ある。人類はサバイバルしないといけない。失業問題があるから環境問題に目を
つぶれというのは本末転倒もいいところだ。
低炭素、グリーン革命必要に
あと20年で、原発を235基増やし地熱発電を5倍化、再生可能なエネルギー
による発電比率を40%にする必要がある。グリーンな産業の全面的、全速力で
成長させるためには、2014年がポイント・オブ・ノーリターンの年になる。
やらなければ気候戦争のリスクさえ抱え込むことになる。
エコイノベーション、エコビジネスで地球温暖化に立ち向かう必要性を強調し
たい。
山本良一 教授 東京大学先端科学技術研究センター
メモ
1946年茨城県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院修了、工学博士。マックス・プランク金属
研究所客員研究員、東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学国際・産学共同研究センター
長を歴任。2004年より現職。文部科学省科学官、エコマテリアル研究会名誉会長、日本LCA
(ライフサイクルアセスメント)学会会長、北京大学をはじめ中国17大学の客員教授を兼任。
近著に「地球を救うエコマテリアル革命」「戦略環境経営エコデザイン」「サステナブル・
カンパニー」「気候変動+2℃」(責任編集)など多数。
(9)The Sekainippo インタビュー 平成21年(2010 年)1月4日(月曜日)第3種郵便物
スライド解題
14回地球市民フォーラム講演資 2009.11.28 山本 良一
「25%削減から100%削減へ─ゼロカーボンエコノミーへの挑戦」
“地球が温暖化している”ことは科学的に証明されている(No2)
地球温暖化の加速が起こっている IPCC-AR4(2007)
*この100年で地球の表面温度は0.74℃上昇(1906-2005)
*1901-2000で0.6℃上昇(IPCC-TAR)なので温暖化は加速している
*過去50年間については0.13℃/10年間上昇、この値は過去100年間についての値の2倍
*ヒートアイランドの効果は陸地について0.006℃/10年、海については零。地球温暖化に
対してヒートアイランドの効果は小さい。
*海面水位上昇は1.8mm/年(1961-2003)に対して3.1mm/年(1993-2003)であり、加速している。
現在の地球温暖化の原因は人間活動である (No10)
地球温暖化の真実ーIPCC第4次報告書から
人為起源の温室効果ガスによる地球温暖化が生じている証拠
(1)温室効果ガスの濃度の増大は人間活動が原因
濃度に地域差があり、人口の多い北半球の陸域から主に発生、
同位体分析により、CO2増加分のほとんどが化石燃料の燃焼に由来、
メタンと一酸化二窒素は農業活動と化石燃料消費による
(2)20世紀の気候再現実験で、人為的要因を加えたシミュレーションで
初めて20世紀後半の観測された温暖化を再現できる。
(3)人間活動が影響している証拠は、次の二つのパターンに表れている。
1つは海洋よりも陸域の温暖化が大きく、海洋では深部より表層の温度上昇が大きいことだ。
これは大気が温室効果ガスによって温暖化していることと一致する。
また、対流圏が温暖化する一方、成層圏は寒冷化していること。
太陽の変化が温暖化の主因ならば両方の温度が上がるはず。
しかし現実には両者に差があり、この観測結果は温暖化ガスの増加と成層圏オゾンの減少
から予測されるものとまさに一致する。
温暖化リスクの性質の理解:科学的不確実性 変化の原因は人為的なものか?
最近50年間の温暖化のほとんどは人間活動に起因
(a) 自然起源の応答(太陽放射や火山噴火)だけでは、20世紀後半の温暖化は説明できない
(b) 最近50年の温暖化は人為起源の温室効果ガスによるものだと識別できる
(c) 全ての人為起源と自然起源の因子を複合させると、過去140年間の観測値とモデル計算が
最もよく説明される
太陽による放射強制力と地球の表面温度の間の最近の反対方向の変化
By Mike Lockwood and
Claus Frohlich Proc. R. Soc.
A doiilo. 1098/rspa. 2007. 1880
産業革命以前の地球気候へ太陽活動が影響を及ぼしたことについては多くの証拠がある。20C前半に
おいても太陽が気候変動の一要因であった可能性が高い。しかしこの研究では、過去20年間については、
地球気候に影響を及ぼし得る太陽活動のすべての傾向(trends)は、地球表面の平均温度の上昇を
説明するために必要な変化とは正反対な変化をしてきたことを示す。
大気中のCO2の増加速度=152億トン/年 CO2は長寿命である化石燃料起源の大気中へ放出されたCO2は、
100年後に1/3、1000年後に1/5残留して地球を温暖化し続ける。
京都議定書は人類史に残るが、地球温暖化防止にはほとんど有効ではない。(No39)
温室効果ガスを年間490億トン排出,CO2は152億トン空気中に蓄積している現状では京都目標では
温暖化をストップさせることはできない
このまま地球温暖化を放置すれば焦熱地獄となる (No44)
産業革命前より上昇した気温に応じた影響予測(スターン報告書より)
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水 |
食糧 |
健康 |
土地 |
環境 |
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1度 |
アンデス山脈の小氷河が消滅。5000万人が水不足に直面。 |
温帯地域の穀物生産量が少量増加。 |
少なくとも年間30万人が気候変動に関連する病気(下痢、マラリア、栄養失調)で死亡する。北欧や米国北部では冬季の死者数が減る。 |
カナダやロシアで永久凍土が溶解し、住宅や道路に損傷を与える。
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少なくとも10%の種が絶滅の危機に直面する。豪州のグレートバリアリーフを含め80%のさんご礁が白化する。 |
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2度 |
アフリカ南部や地中海などの地域で利用可能な水が20%〜30%減少 |
熱帯の穀物生産量が急減。アフリカでは5〜10%減。 |
アフリカで4000万〜6000万人がマラリアに感染する。 |
海岸沿いで毎年1000万人以上が洪水の被害を受ける。 |
15〜40%の種が絶滅の危機に直面する。シロクマやカリブーを含めた北極圏の生物で絶滅の恐れが高まる。 |
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3度 |
欧州南部で10年に一度、深刻な干ばつが発生。10億〜40億人が水不足に直面する一方で、10億〜50億人が洪水に見舞われる危険性が高まる。 |
1億5000万〜5億5000万人が飢餓の危機に。高緯度での食糧生産がピークを迎える。
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100万〜300万人が栄養失調のために死亡する。
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海岸沿いで年間100万〜1億7000万人が洪水の被害を受ける。
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南アフリカで25%〜60%のほ乳類、30%〜40%の鳥類、15%〜70 %のチョウが、全世界では20%〜50%の種が絶滅の危機に直面する。アマゾンの熱帯林の崩壊が始まる。 |
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4度 |
アフリカ南部と地中海沿岸で利用可能な水資源量が30%から50%減少。 |
アフリカでの食糧生産が15%〜35%減る。豪州の一部など生産ができない地域が生じる。 |
アフリカで8000万人以上がマラリア感染にさらされる。
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海岸沿いで年間700万〜3億人が洪水の被害を受ける。
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北極圏のツンドラの半分が消失。世界の自然保護区の半数が動植物保護などの役割を失う。 |
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5度 |
ヒマラヤ山脈の巨大氷河が消滅の危機。中国人の4分の1,インド人の数億人の暮らしに影響を与える。 |
海の酸性度が高まり、海洋生態系が乱れる。
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島しょ国、ニューヨークやロンドン、東京などの主要都市が海面上昇の危機に脅かされる。 |
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気候リスクを回避するための気候ターゲット2℃ 気温上昇を2℃以下に抑制する (No54)
気候ターゲット2℃設定の理由
(1)リスクにさらされる人口は時間と共に一般的に急になる(増加)
2050年よりも2080年の方が多い。 気温、降雨量、海面上昇が大きいため。
2080年の水不足人口が多いのは、中国、インドの都市人口が急増するため。
飢餓人口→穀物の熱ストレスの増加のため
(2)どれだけ排出量を削減すべきか
550ppmvに安定すべきである。450ppmvにするとリスク人口は大きく減少、しかしコストがかかる
(3)削減案(mitigation)だけでは解決できないだろう。
適応策(adaptation)も必要となる。干ばつに対する予防、洪水に対する予防、水の効率的利用、
より良いマラリアコントロールなどはwin-winの戦略である。
地球温暖化の暴走の懸念 (No65)
温暖化の加速(今なら気候リスクを回避可能)→温暖化の暴走?(コントロール不能)
産業化前からの温度上昇
0.8℃ → 1.5℃ → 2℃ → 3℃
(2004年) (2016年頃) (2028年頃) (2052年頃)
北極海氷の減少、グリーンランド氷床の全面融解
シベリア凍土からCH4、CO2放出
海、森林のCO2の吸収能力の減少
森林からのCO2放出, 土壌からのCO2放出
海洋からのCO2 、CH4の放出, 西南究極大陸氷床の不安定化
気候危機が20年後に迫っていると考えられる根拠 (No66)
(1)地球表面温度の上昇の2℃突破のPoint of No Returnは約20年後
(2)海洋酸性化による悪影響が数十年後に顕在化する(モナコ宣言2008.10)
(3)夏の北極海氷は10〜20年後には年後には消失し北極圏の温暖化は3倍に加速
(4)グリーンランド氷床の正味の損失は現在約1800億トン/年で増加中
(5)2℃突破でアマゾン熱帯雨林の20-40%が枯死
(6)100万種とも言われる生物種が絶滅するリスクが高まる
(7)2030年までに世界人口の半分が水不足に。
(国連の第3次 World Water Development Report 2009)
環境変化によって移住せざるを得なくなる人々の数は、2010年までに2500万〜5000万人、
2050年までに7億人と推定されている。IOMは2050年までに2億人と見積もっている。
ティッピングポイント(The Tipping Point)
あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に野火のように広がる劇的瞬間のこと
夏の北極海氷がティッピングポイントを超えるとドミノ現象が起こる
夏の北極海氷消滅の影響(Perspectives on the Arctic’s Shrinking Sea-Ice CoverSerreze Mark C.,
Holland Marika M., Strove Julienne Science Vol.315(5818),16 March 2007,pp
1533-1536)
*北極圏の秋や冬が顕著に温暖化する
これは海洋から大気へより多くの熱が伝わるため
*アラスカ、シベリアの沿岸域の海岸浸食が進む
海岸から氷が後退すると、風が海洋を自由に吹きわたって波浪を作るため
*海氷消失により原住民や北極グマなどの狩猟に影響が生ずる
北極グマの絶滅が懸念されている
*大西洋側の北極海氷の消滅によりNAO-NAMが、負の大気循環応答する可能性
暴風雨の経路が南方へわずかにシフトする
*中緯度の暴風雨が強まり、冬季の西及び南ヨーロッパの降雨量が増加する
*アメリカ西部の降雨量が減少
*北大西洋に淡水が注入されることによりグローバルな熱塩循環が阻害される可能性
結論 (No112)
気候ターゲット2℃突破のPoint of No Return
予測値には不確実さがあるが、あと20年程度の時間であり、100年後という訳ではない。
気候ターゲット2℃の意義
グリーンランド氷床などのティッピングポイントを越えないため。
ただし夏の北極海氷のティッピングポイントを越えることを予防できるかどうかはギリギリ。
CO2ターゲット350ppm (No127)
Cenozoic Era(新生代、6550万年前)のCO2濃度の歴史についての研究から450±100ppm以上の
濃度では(それを長く継続すると)地球から氷河が消失することが分った。したがってCO2濃度
を350ppm以下にすることが危険な気候変動の回避のために必要である
現在のCO2濃度=385ppmは既に有害な水準
2℃シナリオを採用して直ちに全面的な予防対策を実施せよ
同時に必要な適応策を取れ
3℃/550ppmシナリオは気候リスクが高過ぎる
*夏の北極海氷は消失、グリーンランド氷床や西南極大陸氷床の大規模融解
などが生じてしまう可能性大
2℃/450ppmシナリオ実現には膨大な努力を必要とするがやれないことは無い。
*北極海氷が守れるかどうかは科学的不確実さを考慮してギリギリの所。
0.5℃/320ppmシナリオでは政治的、経済的に合意が困難。
*大気中よりCO2を除去するためのCCS付きバイオマス発電所の大量建設等が必要
*北極海氷、グリーンランド氷床の全面融解の開始などのティッピングポイントは回避できる
と考えられている。
2℃/450ppmシナリオの実現には天文学的な努力が必要だが、断じて実行しなければならない
気候変化による悪影響は戦争の原因になる
最初の気候戦争 (No146)
潘事務総長は記事の中で、「ダルフールの紛争は、気候変動をそのひとつの要因とする生態学的危機が
きっかけとなって始まった」と述べた。インド洋の温度上昇が季節風に影響を与え、過去20年間で降水量
が40%程度減少したとする国連の調査に触れ、「これはサハラ砂漠以南の乾燥化の原因の一つが人的要因
による地球温暖化であることを示唆している」という。
「ダルフールでの紛争が乾季に発生したことは決して偶然ではない」と説く。
潘事務総長によると、ダルフールの土地がまだ豊かだったころ、農業に従事する現地の黒人らは、アラブ系
の遊牧民を歓迎し、水を共有していたが、干ばつが深刻化する農地の周りに柵をめぐらせて放牧を防ぐよう
になったという。「有史以来初めて、食べ物と水が全住民に回らなくなったことで、紛争が始まった」
最初の水戦争 Fred Pearce著 古草秀子訳「水の未来」 (日経BP社、2008年) (No154)
1964年、イスラエルがヨルダン川をハイジャックした。それ以前のヨルダン川は1000年前と変わらない姿で
ゴラン高原に端を発し、途中でガリラヤ湖にそそぎ、そして死海へ向けて溪谷を流れていた。
ところがイスラエルが建設したダムによってせき止められガリラヤ湖へそそいでいた水は消えた。
六日間戦争のときの司令官であり、後にイスラエルの首相となったシャロンは自伝に書いた。
「六日間戦争が本当にはじまったのは、イスラエルがシリアによるヨルダン川の流路変更を実力で阻止する
と決定した日である。国境紛争は大きな意味を持っていたものの、流路変更は生死をかけた重大問題だった」
戦前には、イスラエル領内にあったのはヨルダン川流域面積のわずか10分の1だったが、最終的にはヨルダン川
はほぼ完全にイスラエルの支配下に置かれるにいたった。
世界は低炭素経済へ向けて急速に動き出した! (No.160)
鳩山首相、「温室効果ガス25%削減」を明言 2009年9月7日
最近のグリーン・ニューディールをめぐる世界の動き (No180)
2009年1月 韓国政府 「グリーン・ニューディール推進法策」を公表
日本 斉藤環境大臣は「緑の経済と社会の変革」策定すると発表
2009年2月 米国 「米国の再生及び再投資に関する2009年法律」成立、総額7872億ドル
(79兆円)の景気刺激策
2009年3月 中国 張平国家発展改革委員会主任、2100億元(3兆円)を環境対策等に投資
すると表明(緑色新政と評されることもある)
英国政府 「低炭素産業戦略ビジョン」を表明
2009年6月 OECD 「緑の経済成長戦略」の策定を表明 以上 スライドNo.182枚要旨
(要旨作成 森田義彦 東大工学部精密機械学科’85卒)