東日本災害復旧 提 案 書
平成23 年3 月15 日
一般社団法人 循環型社会研究協会 代表理事 梶栗 達也
東日本大震災において被災された方々に、心よりお悔やみ申し上げます。津波による被災
地には、海底に積層していた黒いヘドロの流入や、海水、機械油などの燃料に汚染された木
くずガレキが大量に発生しています。春になるとともに気温が上昇し、ヘドロ等から悪臭が
発生しはじめ、被災地の衛生環境を著しく悪化させてしまうことが懸念されます。悪臭抑制
と、油、有機物等に汚染された土壌の早期改良工事の実績をお伝えし、今後の災害復旧のご
参考にしていただければ幸いです。
【処理概要】
〔市街地について〕
1.家屋等の木クズを、被災地周辺の河川敷に集積して破砕チップ化し、その直後に腐
熟促進剤(複合有効微生物群)を点滴方式にて添加し、堆肥化副資材を混合し堆積し
二週間シート養生を行う。
2.堆肥化物と河川土を一対一の割合で混ぜ、その資材をフレキシブルバックに詰め、
後記写真で示す様に並べて堤防を築き溜池状にする。バックの外側に、河川の土砂
を盛フレキシブルバックが崩れないようにする。この処置により、フレキシブルバ
ック内の堆肥化物が、暗きょうの役割を果たす。さらに、市街地や圃場表層に溜ま
っているヘドロを流し込むことで異臭の発生を抑制する。
〔農地について〕
1.流木(自然木)を、前記と同様に破砕チップ堆肥化処理し粗方ヘドロを取り除いた農
地に入れ鋤き込み、塩害や油脂による土壌障害を改善する。
【浄化技術のポイント】
〔油分や有機物の分解作用〕
堆肥化物中に存在する酵素セルラーゼが、油分、有機物を分解する。
〔有害重金属の無害固定化〕
堆肥化物中に存在するバチルス菌群が、木質中のリグニン、セルロース、ヘミセルロース
を吸収し、自らがポリアクリルアミンを生成し、有害重金属をくるみ込み無害固定化する。
〔悪臭発生の抑制〕
堆肥化物中の有用微生物群が、堆肥化物中で発生するアンモニアガス、硫化水素等の悪臭
源となるガスをエネルギー源として吸収し活動するため、堆肥化物からの悪臭の発生が抑
制される。
改善事例 河口閉塞浚渫土(塩分過剰及び油脂混入土)の改善
工事年度:2006 年10 月 工事場所:新潟県岩船郡荒川町
工事名:荒川桜づつみその他工事 発注者:国土交通省
1.現場発生木クズ集積
2.木くず破砕
3.河川敷浚渫土溜池
4.浚渫土溜池土納敷設
5.複合有効微生物群臭気除去散布処理
6.脱水
7. 施工一年後の状態
(参考解説)ヘドロから生じる悪臭の根源メカニズム
海底から押し上げられたヘドロには、メタン生成菌が生息するものと思われる。そのメ
タン生成菌の一種は、海底に堆積しているヘドロ中の火山灰に含む硫黄や元々海水は古来
硫化水素が化合し海塩性硫酸水となったものと推測される。この種のメタン生成菌は、そ
の硫黄を酸化し硫酸にするなど海塩性硫酸水も更に酸化され硫化水素化され、酸化発熱な
どが生じ有機物を溶かすことで過酸化水素及び硫化水素が形成されるものと思われる。そ
のことから、パターン的にはドブ川と同様の腐敗が始まり複合ガス化が生じ悪臭が発生す
ることが想定される。
前記の様な作用は、一種のメタン生成菌が異常に増殖することにより起こるものである
が、現況条件下においては大気中や地上で硝酸態窒素還元菌が異常に増殖し、占有しつつ
あることなどで起こり易くなっているものと考えられる。
なぜなら、硝酸態窒素還元菌(ニトロソモナス属・ニトロバクター属)がメタン生成菌が増
殖することが出来る、唯一の窒素ガスを生成することが出来るからである。
木くずを適正に堆肥化処理することによって、過酸化水素、硫化水素やメタンガスを発
生させる、硝酸態窒素還元菌やメタン生成菌の増殖を抑制する菌が増殖する。このことに
よって、硫化水素やメタンガスの発生が抑制される。
事例研究
一般社団法人 循環型社会研究協会
事例1.新潟市東港
塩害と油汚染の改善事例
大型船舶が停泊する、新潟市東港埠頭の海底に堆積したヘドロを浚渫し、近隣に、その浚渫土
にて埋立し工業団地を造成したが、塩分や油による植生障害が生じた。
植生・植栽障害 芝生の立枯れ
植生・植栽障害 植生成長せず
カッセーチップ処理後 植生・植栽障害改善
事例2.一級河川荒川河口閉塞
河口閉塞は、日本海における冬季間の打寄せる高波により、砂礫が海から押し上げられ河口に
堆積し、本流をも閉塞してしまう勢いであり、河口付近の支流は水の流れが少ないため、冬季間
は殆ど閉塞され上流から流れ込むヘドロが堆積する。
施工方法
1.建築解体木の再利用
@一次破砕直後、「カッセー液」を添加し堆積ストックする。
A透水性を良くするため、砂利とチップを一対一の割合で混合し土納に詰め、築堤土砂の流出を防ぐ。
B浚渫土の水切りを良くするため、底の部分に土納を縦横に並べ暗きょう効果を持たせる。
2.自然木の再利用
@一次破砕直後に、「カッセー液」を添加する。
A二次破砕を行い、土壌改良資材(特殊バークたい肥)を20%を添加し混練後二週間程度堆積し堆肥化する。
B堆肥化物の、腐熟状態をチェックしOKになったら農耕地10a当りに約3t程度散布し、それを
農耕地に鋤き込み過剰塩分や油脂分を複合有効微生物群、及び酵素(セルラーゼ等)にて分解させる。
ヘドロ浄化資材に利用 農地土壌改良材に利用
改良土敷設状況改良土敷設状況
異臭脱臭作業 異臭脱臭作業
施工後半年経過状況 施工後半年経過状況