創立4周年記念 第14回地球市民フォーラム
「地球環境問題と“地球市民”の役割」   地球市民機構  GCI Global Citizens Initiative

       国連憲章は、私たち一人ひとりが、国際平和と安全の維持,人権の促進,経済・社会的
        発展のめに力を合わせて行動することを求めています。

      
地球的規模の問題の深刻化、経済のボーダレス化,情報通信のグローバル化に伴い,
       「宇宙船地球号」の乗組員であるとの意識の深化は、日々,その必要性を高めています


        今や世界は主権国家の枠組みだけでは捉えきれない多様な行動主体から成り立っています。
       私たちは “地球市民”として,国連諸機関の活動に積極的に参画し,地球規模の諸問題を
       自分自身の問題として対処していくことを求められています。

       去る2009年11月28日(土)、大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウスにおいて今回改めて
       「地球市民フォーラム」を開催し,「地球環境問題」をメイン・テーマに,国連が掲げる4つの
       テーマ「平和」「人権」「開発」「環境」などについても分科会で討議しました。
    

     

         
       
地球市民フォーラム宣言文【T】


人類の歴史は、欲望の追求による競争原理に翻弄された紛争の連続でした。20世紀に入って
2度繰り返された世界大戦は科学技術の未曾有の進歩を促し、その結果、人類社会、とくに先
進諸国では、高度の物質文明が発達しました。しかし、その反面、核兵器の拡散、貧富の差の
拡大、テロ、地球環境破壊など深刻な問題が派生し、人類の生存そのものが脅かされる事態に
なっています。これらの“地球規模問題群”(global issues)を直視するとき、この際、全
人類が従来の発想と価値観から脱却して、新しい倫理と行動様式を確立しなればならないこと
は明らかです。

とくに今日の地球規模の複合汚染は人類の未来に暗い影を投げかけています。資源の乱獲と無
秩序な利用に伴う自然破壊、製品の大量生産と大量廃棄、化学物質による環境汚染と健康障害、
―これら全人類に関わる諸問題は、単に政治・経済・外交上の課題にとどまらず、国家の産業
・経済活動から個人の消費行動に至るまで、私たちの日常生活の根幹に深い影響を及ぼしてし
ています。とりわけ地球温暖化問題は深刻で、既存の技術では解決不可能であり、私たちがラ
イフスタイルを根底から改め、あまねく循環型社会を実現する以外にないと指摘されています。

このような“地球規模問題群”に対する認識を共有するなら、人間は地球生態系の一員であり、
「内なる自然」ともいうべき自己と、「外なる自然」である環境との相互連関を通じて、共に
創造的進化を遂げなければならないという結論に到達します。私たちの生存が保証され、未来
を託せる道は、自然生態系との「共生」以外にはあり得ません。それゆえ、人間生活のすべて
の営みは、自然との「共生」を常に意識しつつ、欲望の自己抑制、道徳心の涵養、倫理性の向
上などの努力を通じて、「いのちの尊厳」という価値観を個人と社会の中に確立していくこと
にその目標を置かなければなりません。

私たちは、たとえどんなに小さなことでも愛(いつくしみ)の心を忘れず、人類が直面する
“問題群”に対処するに当たっては、一人ひとりが自らの行為に使命感と責任感をもって努力
する心構えが必要です。そうした心構えをもって、私たちは、それぞれが所属する組織・団体
・地域社会と連帯し、地球市民としてのネットワークを構築し、相互に協力し合うことによっ
て、社会の進路をより健全な方向に転換する原動力となることを誓います。この使命感と責任
感に基づいて、思想と行動が一体になったとき、「発展」と「持続」、「自由」と「安全」の
両立がそれぞれ可能となるものと確信します。

「私とは、私自身と私の環境との連体である。そしてもし、この環境を救わないなら、私も救
えない」とスペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットは語っています。私たち“市民国
連”は、「国際連合」をはじめとする国際機関に対して市民ならではの提言を積極的に行い、
「いのちの尊厳」を原点に、ヒューマニティに溢れた「真の平和と豊かな文化」の実現のため
に、人びとのために、人びとと共に、邁進することを宣言します。       

   2009年11月28日  東京 
          
                第14回地球市民フォーラム参加者一同

  

    地球市民フォーラム宣言文【U】


現代は科学革命の時代と言われている。交通・通信手段の発達をはじめとして、科学の恩恵を
抜きに現代生活は成り立たないことは確かである。反面、科学は、核分裂反応の利用という
「パンドラの箱」を開け、人類絶滅の脅威をもたらしたのをはじめ、経済発展の格差から生じ
る絶対的貧困を生み、さらに20世紀初頭、文明批評家達が警告したように、人間の“非人間
化”(de-humanization)を造り出した。

今回のメイン・テーマである地球環境問題をとっても、科学の粋を極めた核兵器など大量破壊
兵器の使用そのものが最大の環境破壊であり、他方、生態系とのバランスを無視した”“経済
至上主義”の結果としての環境破壊、これを加速化させているのも科学の力である。

地球温暖化阻止のためにも、その他の地球環境問題の解決のためにも、3R(Recycle, Reduce,
Reuse)の励行、自然エネルギーの活用、私たちのライフスタイルの転換、そのための意識改
革が不可欠である。

科学革命で先駆的役割を果たした西欧諸国は科学技術の圧倒的な力で世界を席巻した。その背
後にある、個性・人権・自由・民主主義を尊ぶ西洋的伝統には十分敬意を払うに値する。しか
しながら、現在、未曾有の危機を人類にもたらしているのもこの西洋の伝統にあることに着目
すべきである。

西洋では「存在」を、環境を捨象した「個」と捉えてきたのに対して、東洋では存在を「場」
―関係性と捉える。環境を無視して「個」を主張しようとするパラダイムから環境破壊が起こ
るのは当然の帰結である。地球温暖化問題でも、空・陸・海の包括的な調和を取り戻すことが
大切で、個別の対応と共に複眼的に思考とアプローチで対応すべきである。たとえば、東洋で
は人間を「ヒトとヒトの間」、つまり「連体」と捉える。人間現象の一部に過ぎない経済活動
のみを取り上げ、経済学を論じようとすること自体が誤りである。予定調和の楽観主義が支配
した時代を生きたアダム・スミスは、人間の利他性を認めながらも、人間のエゴと自由性によ
り大きな期待をかけた。新しい経済学は環境保全のパラダイムを重視し、人間をどう捉えるべ
きかの原点から再出発すべきである。

「もったいない」という日本語が国際的にも普及している。日本文化の伝統の中には、「見え
るものの背後には必ず、見えざるものがある」という、物心一如の捉え方がある。「永遠の今」
という東洋の叡智も「今」は過去の相続であり、未来の胎動を包摂した時間を超越した「今」
を語っている。ここに西洋の科学文明が陥った危機を克服するヒントがある。私たちは、“地
球的問題群”解決の鍵は、現象の根底に横たわるパラダイムの転換にあると信じる。自然を含
めた共生と共栄の平和な世界を築くには、東西文明の融合の上に、東西の枠組みを超えた新し
い視点を構築すべきであると確信する。

      2009年11月28日 東京  
                     第14回地球市民フォーラム参加者一同

      偏狭なナショナリズム超える精神文明構築を
                            地球市民機構フォーラム

NGO地球市民機構は28日、都内で「地球環境問題と!地球市民"の役割」をテーマにフォーラム
を開催した。学識者やビジネスマンなど約120人が参加。
温暖化問題に取り組んでいる東京大学の山本良一教授は、基調講演で「日本人はもうサイエンスを
金儲けのねたと考えるが、自然法則に逆らえば存在自体が否定される。一方、サイエンスを産み出
してきた欧州は、その結論を重く見て動きだす」と欧州との違いを指摘。多数意見が真実であると
は限らないが、科学的結論を社会的意思決定の基礎にしなければならないと述べた。

その上で「放出二酸化炭素の寿命は長く、気候システムの熱的慣性は大きい。気候の安定には、
二酸化炭素排出量を急速にゼロにする必要がある」と警告した。
また大阪経済法科大学の吉田康彦客員教授が「現在はグローバル時代の揺り戻りの時を迎え、
ナショナリズムの台頭や地域紛争などが起きるようになった」との時代認識を示した上で、偏狭な
国家主義に陥らないよう、国益を超えた人類益や地球環境保護を担保できる精神文明の構築を
主張した。                   

               池永記者 世界日報2009年11月28日15面社会面 

「25%削減から100%削減へ   ゼロ・カーボン・エコノミーへの挑戦」

     地球市民機構フォーラムでの講演要約

温暖化問題に取り組んでいる東京大学の山本良一教授はこのほど、地球市民機構
フォーラムで「25%削減から100%削減へゼロ・カーボン・エコノミーへの挑戦」
のテーマで基調講演した。山本教授はこの中で「放出された二酸化炭素の寿命は長く、
気候システムの熱的慣性は大きい。気候を安定させるには、二酸化炭素排出量を急速に
ゼロにする必要がある」と警告した。とりわけ山本教授は、簡易本が安易な楽観論を
ばらまいていることを批判、科学的結論を社会的意思決定の基礎にしなければならない
と強調した。以下は、大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウスで行われた講演の要約。


地球温暖化は回避可能

環境問題では激しい議論がある。イギリスの気象庁は「あと10年」という結論を
出した。

米航空宇宙局(NASA)のジェームス・ハンセン博士は、「ポイント・オ
ブ・ノーリターン」は過ぎたと言っている。人類にとって残された時間はない。
絶体絶命の状況にあるというのだ。

しかし、地球の温暖化は回避できる。それには全知全能を傾けた上での全力疾
走が必要で、低炭素革命とグリーン革命を成功させなければならない。まさに人
類に地球市民の自覚ができるかどうかに懸かっている。いわば禅における悟り
と同じだ。ホモサピエンスとして、生物種としての悟りを開かなければいけない
時に来ている。昨年(2008年)のリーマン・ショックにせんだってのドバイ・
ショック、早急な経済再生が望まれるところだが、それには環境ビジネスを喚起
する必要がある。世界は今やグリーンリカバリー、グリーンニューディールの大
合唱だが、潜在的マーケットは巨大だ。

気候政策は安全保障にもかか関わってくる。その意味で環境問題への取り組みは、
安全保障政策であると同時に経済成長戦略でもある。
海面水位は一貫して上昇し続けている。これは海水の熱膨張および氷河の溶解
が主原因だ。世界的な温暖化の原因は、化石燃料の大量消費による炭酸ガス排出
だ。

これが、過去50年で蓄積された人為起源の温室効果ガスとなった。
2007年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書が公表
された。この英文1000nの報告書「気候変動の科学的基礎」の中に、「真犯
人は誰だ」という原因分析が83nにわたって書かれている。

これを読むと、人為起源の温室効果ガスというのが証明されている。
世の中に出回っている簡易本は、この83nを読んでいない。とりわけ科学者が
注目しているのは、温室効果ガスが地球を毛布のようにくるむと、成層圏は寒冷
化し、地表に近い対流圏は温暖化するという結論だ。

太陽黒点説で説明する向きもあるが、これでは成層圏も対流圏も一様に寒冷化
するか温暖化することになり説明し切れない。


科学ベースに意思決定を


科学は常に発展している。多数意見が真実であるとは言えないが、意思決定
しないといけない時期に来ている。そのために科学的根拠を社会的意思決定の基
礎にしなければならない。

地球の表面温度は、最高温度を更新中だ。二酸化炭素が年間2ppm増加して
いる。1ppmの二酸化炭素の重量は80億dだ。これだけ大量放出されると、海
など自然界で吸収される許容度をはるかに超える。

人類は、1000年、2000年の地球的責任を負っている存在だ。そのため
には1000年、2000年後のことを考えた産業活動が必要となる。そういう
意味で、今は人類史的大転換を図らなければいけない時だ。
地球に残っている化石燃料である石炭や石油、天然ガス、オイルシェールを全
部燃やすと、二酸化炭素は炭素換算で40 0 0!d(1!dは10億d)になる
と試算されている。

これだけの二酸化炭素が空中に散布されると、30万年たっても二酸化炭素濃度
は産業革命の前には戻らない。化石燃料の消費を続ける限り、氷河期が来ること
はない。

このままでは地球が持つわけがない。大量の資源消費に歯止めを掛け、脱炭素
化と脱物質化を進めなければならない。
温暖化は、佐渡島にリンゴだけでなくミカンをも取れるようにした。こうした
温暖化現象の副次的なことを言う人もいる。しかし、総論からすると、悪影響の
方が良い効果をはるかに上回っている。!!!!!

試される人類の愛と理性素人でない
気候戦争のリスクも


気温の1度や2度、大したことがないと思うかもしれない。しかし、お風呂の
湯加減が、通常から1度2度上がると結構熱い。地球も同じだ。3度、4度上が
ればアウトだ。それは地球文明の崩壊を意味する致命的なものだ。

米国では上院では難しいが、下院では地球温暖化防止法案を通過させた。日本
はそれすらやってない。

日本ではサイエンスは金もう儲けの種かエンターテインメントと考えがちだ。一
方、サイエンスを生み出してきた欧州では、その結論を重くみて動きだす。日本
の腰は重く、サイエンスを見くびっている。

二酸化炭素排出問題は、中米のチキンレースの様相を示している。中国は先進国と
しての責任を負う米国から先にやれと言い、米国は最大の二酸化炭素排出国である
中国からまず手を着けろという。

これでは、相互確証破壊(MAD)による核ミサイルの安全保障と同じだ。
核の相互確証破壊というのは、核ミサイルを撃ち込まれても、残った核ミサイル
で攻撃できるからという安全保障論理だ。今新しいMADが提案されている。
相互信頼脱炭素化(Mutual Assured Decarbonization)である。相手を信頼
して自ら率先して二酸化炭素削減に取り組む、人類の愛と理性が試されていると
も言える。

このまま放置し続ければ、グリーンランドの氷床は解け、アマゾンの熱帯雨
林は破壊される。結果として40年で2億人の環境難民が生み出される。
北極海の氷がこのまま進めば30年で消滅する。NASAは今年(09
年)7月、北極海の氷が2015年にも消滅する可能性があるというデ
ータを公表した。政治家は最悪の事態を想定して対応しないといけない。
ティッピングポイントを超えると、ドミノ現象の懸念もある。破壊が破壊を呼
び込み、破滅の坂を転げ落ちることになりかねない。

いずれにしろ空中に排出された二酸化炭素の寿命は長く、気候システムの熱的
慣性が大きいため、気候安定化には二酸化炭素排出量を急速にゼロにする必要が
ある。人類はサバイバルしないといけない。失業問題があるから環境問題に目を
つぶれというのは本末転倒もいいところだ。

低炭素、グリーン革命必要に

あと20年で、原発を235基増やし地熱発電を5倍化、再生可能なエネルギー
による発電比率を40%にする必要がある。グリーンな産業の全面的、全速力で成
長させるためには、2014年がポイント・オブ・ノーリターンの年になる。や
らなければ気候戦争のリスクさえ抱え込むことになる。

エコイノベーション、エコビジネスで地球温暖化に立ち向かう必要性を強調し
たい。

山本良一教授東京大学先端科学技術研究センター

メモ
1946年茨城県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院修了、工学博士。マックス・
プランク金属研究所客員研究員、東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学
国際・産学共同研究センター長を歴任。2004年より現職。文部科学省科学官、
エコマテリアル研究会名誉会長、日本LCA(ライフサイクルアセスメント)学会
会長、北京大学をはじめ中国17大学の客員教授を兼任。

近著に「地球を救うエコマテリアル革命」「戦略環境経営エコデザイン」「サステナブル・
カンパニー」「気候変動+2℃」(責任編集)など多数。

(9)The Sekainippo インタビュー 平成21年(2010 年)1月4日(月) 

地球に生かされている自覚を

都内で第14回“市民国連”フォーラム

海、陸地の蘇生訴え

自然と共生の宣言」採択

 一人ひとりが公的機関に頼るのでなく、人類共通の利益のために貢献・連帯
していこうとの趣旨で設立された「地球市民機構」(理事長、福岡克也・(財)
日本環境財団会長、地球市民機構理事長)が、このほど第14回地球市民フォー
ラムを都内で開催。環境問題に関心を持つ参加者が集う中、全体会議、分科会
で活発な議論が展開され、人間と自然が共生する新たなパラダイム構築の必要
性を提言した「地球市民フォーラム宣言」も採択された。


 設立3周年を記念し、11月28日に開かれた同フォーラムでは、天文学者
の海野和三郎・東京大学名誉教授が開会のあいさつ。村上和雄・筑波大学名誉
教授の論文を参考に「人間の心にはある種のエネルギーがあり、たとえば『笑
い』が糖尿病患者の食後の血糖値上昇を抑制し、その際、『心の持ち方』が遺
伝子のオンとオフを変えるという事実がある」とし、現代は、人類はじまって
以来の行き詰まりの時代だが、人間が変わることで環境問題も解決できること
を示した。

 全体会議では、まず吉田康彦・大阪法科大学アジア太平洋研究センター客員
教授が「2010年:国連と“地球市民”の役割」と題して基調講演。吉田氏
は、第二次大戦後、経済のボーダーレス化、情報化社会の出現、「成長の限界」
レポートや国連人間環境会議(1972年)の開催により、仏作家のアンドレ
・マルローが提唱した「地球市民」という意識が育まれてきた、と述べた。

 その後、過度のグローバル化現象のゆり戻しで、偏狭なナショナリズムの台
頭や地域統合、民族主義の復権がみられたが、21世紀後半期には国家主権が
変質し、人類は「国益か人類益か」の選択を迫られるようになると表明。「地
球の中で生かされているという地球市民意識を原点として持つことが大事だ」
と結んだ。

 続いて、山本良一・東京大学生産技術研究所サスティナブル材料・国際研究
センター教授が、「25%削減から100%削減へ――ゼロカーボンエコノミー
への挑戦」のテーマで地球温暖化対処に待ったなしの状況に来ていることを訴
えた。山本氏は、まず、現在の地球温暖化は人間活動が原因と指摘。「海洋よ
りも陸域の温暖化が大きく、海洋では深部より表層の温度上昇が大きい」とし、
「これは大気が温室効果ガスによって温暖化しているため」と述べた。

 その上で、地球表面温度の上昇が摂氏2度以上となれば、目に見える形で被
害を認識できるようになると説明。気候リスクを放置すれば、今の温暖化の加
速状況から、その時点は2028年ごろになると予測。対策として、エコ・プ
ロダクトの急ピッチ開発、二酸化炭素を炭の形で地面に閉じ込めるバイオ炭の
活用などを挙げた。

 山本氏は東大工学部で鳩山由紀夫首相とほぼ同年代であり、同首相がほとん
ど財界との相談なく、国連で二酸化炭素の90年比25%削減を発表したが、
その決定に関与していたことを示唆した。

 午後の「平和・人権」分科会(座長、吉田康彦氏)では、坂井定雄・龍谷大
学名誉教授が「戦争は人権と環境の最大の敵」と訴えた。「地球環境」分科会
(座長、山元雅信・NPO山元学校学長)では、山元氏が二酸化炭素をよく吸
収する竹の活用を説き、竹炭を土に埋めることで、土壌の改善と松枯れ防止の
一石二鳥を提案した。

 また、渋谷正信・渋谷潜水工業社長は、潜水士としての体験をもとに、近年、
ホンダワラなど海草の混成林が減っており、それに伴い、海草が食料のウニ、
ホタテの生育も悪くなっていると説明。「海草にとっては海水温度が一度上が
ると大変な違いとなる」とし、海に流れ込む栄養素の減少とともに、地球温暖
化の影響に懸念を示した。

 そのほか「開発・エコ技術」分科会では、南部智成・循環型社会研究協会理
事が「陸地の蘇生」、小山清二・特許庁審査経済産業技官が「地球の再生」の
テーマで報告。火山灰活用によるエネルギー問題解決などが提案された。

 「農と食」分科会(座長、三原晃・NPOローハスクラブ理事長)では、美
上みつ子氏がマクロビオティックについて、深井利春・創成ワールド社長が、
水により心も自然も癒される点などについて語った。

 最後に採択された宣言文は「私とは、私自身と私の環境との連体である。そ
してもし、この環境を救わないなら、私も救えない」(スペイン哲学者、オル
テガ・イ・ガセット)の言葉を引用しながら、「人間生活のすべての営みは、
自然との『共生』を常に意識しつつ、欲望の自己抑制、道徳心の涵養、倫理性
の向上などの努力を通じて、『いのちの尊厳』という価値観を個人と社会の中
に確立していくこと」とうたっている。     

 
               山本 彰 世界日報 2009年12月7日 11面教育